Day3 - 居酒屋デート

居酒屋デートが好きだ。そう思えたのは今年の2月だっただろうか。東京に出てきてから友人に連れて行ってもらった大衆居酒屋でその魅力に気づいた。好きなだけ飲み食いして、お会計は3,000円で足りる。お酒は飲めないなりに、烏龍茶で薄めのカクテルをサンドイッチして、ちびちび飲むとちょうどよく酔える気がする。

その日は金曜日の夜、某駅の近くの大衆居酒屋へ。浮かれたサラリーマンや学生で店内は話し声の渋滞状態。対面の席へ案内され、相手との距離もかなり近いが、声を張り上げないと会話ができる状態じゃない。どちらかというと両者とも声が小さいので、顔を近づけながら会話をする。それでも会話は全然聞き取れなくて、そのおかしな状況にクスッと笑い合う。

ほどよく陽気に酔った体に、近すぎる距離感。意味もわからなく愛しさが増す。これが大人のデートってやつか。みんなこんな楽しくて幸せなことしてたのか。お酒が飲めないということを、居酒屋デートをしない理由にしちゃいけないな。

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居酒屋ではゆったり話もできず、もう少し一緒にいたかったので、お散歩を提案。夜風を浴びながら近くの公園まで歩き、謎の遊具に二人で腰掛ける。これがまた絶妙なサイズで、隣に座るとほぼくっついているような距離感だ。話の内容は出身が同じだけあって、地元の新しいお店や文化についてのローカルトーク。お互いに東京の空を見ながら、同郷のことに思いを馳せる。映画みたいでいいじゃないか。

気づけば時刻は日付をまたいでいた。居酒屋に2時間、公園に2時間いたらしい。わたしがもう少しチャラ男ならば終電を逃すという選択肢もあったが、大切に付き合いたい人に不誠実なことはしたくないし、あろうことかわたしは自転車で来ている。

二人で駐輪場まで最後の散歩。自転車まで残り50mくらいというところで、「あそこまで手、つなごうよ」と顔を見た。相手は0.7秒くらい経って、「いいよ」と手を差し伸べてくれた。即答でもなく、迷いがあるわけでもない、思考がめぐるには十分な時間にわたしは嬉しくなった。

人ってこんなに簡単に人を好きになるんだな。次もまた、手つなげたらいいな。